::Re:mem:ber:: k










まるであの日を再現するかの様な現状だ。霧が小粒の雨の様に映り、朝靄が青灰の如く雰囲気を盛り上げる。

里から外れた木々の生い茂る林中は、正にあの時の場面に沿っていた。

素直にカカシに付いて来たものの、場所が場所だけにはこれから起こる事を察していた。



「よし!じゃあー、やるか」



察していたと云っても覚めきっていない頭でまだ体勢が整っていないに、カカシは有無を云わせず攻撃を仕掛け

た。素早さが売りのカカシであるから、向こうの方に居た筈がもう自分の目の前に来ていて、避ける事も出来ず腕を

十字にしては身を護る。

だが、次の瞬間にはの視野の下の方に居り、彼女はあっさりとカカシの攻撃を顎に喰らった。

後方に飛ぶ自分の体を立て直し、また辺りを見るとカカシは居ない。

すごく嫌な気分になった。

今度は後ろか、前か、横からかと思案をはじめると、矢張りここはあのいけ好かない男の事だから……と、はおもい

きり地を拳で突いた。が、すぐに「はっずれ〜」と云う厭味な声が頭上でし、腕を突っ込んだままそれを軸にして標的

を下から上へと蹴り上げる。感触は無い。

が暫しぽかんとそのままで居ると、誰かの足先が逆さの状態で目の前に現れた。



「何してんだぁ。やられるぞー?」



と彼女をバカにした声を発したが、地から上へ湧き上がるチャクラを感じ彼女から間合いを取る。が、もの凄いスピー

ドで迫り来る威力にカカシは足を取られた。地響きと共に、昇り龍の様なチャクラの渦が空へと消える。迂闊に近付い

たのが仇となったのだ。



――あの状態……土中で、しかも片手で印を結んだのか?――



着々と力をつけているにカカシは写輪眼を開いた。あの娘相手にコレを使わねば黙らせる事は出来ない。

カカシは指を交差させたまま彼女を捜す。気配は無いがどこに居るなんてお見通しだ。一気にチャクラを練り、カカ

シは目掛けて突進した。










■ $ ■










爆音がしてから数分。両手を投げ出し仰向けになった阿呆面の上忍は、所々に傷を作り乍らぼーっと空を眺めてい

た。すたすたと足音をたて近付いてくる者がいる。それは丁度彼女の頭付近で止まると、にゅうと厭な顔がの前に

現れた。傷一つ無い。すっぽんの様な顔だ。



「えーっとここら辺に居た女の子は……と、こんな所にいたのか。随分と疲れているみたいだけど、だぁいじょうぶぅ?」

「あぁカモメ先生、生きていたのか!君の顔をまた見られると思うととても惨めな気分になるな!」



はいじけた様に口を尖らせ、ふんと嫌そうな顔をした。けれど彼女はどこか満たされている。

本当は気付いていたのだ。カカシに敵わない事くらい。ただこうして本気でやりあう事に意味があったから、この短い

時間でも得たものは大きい。

まだ夜は明けきってはいなかった。



「それでお前、これからどうするんだ?」

「どうって何がだ?………あぁ、暗部の事だね」

「そ」



「行くのか行かないのか」というカカシの質問に、彼女は真面目に考えはじめる。そしてはカカシに聞き返した。



「なんで君は暗部に行かない?」

「ん?そうだなぁ………」



今度はカカシが思案をはじめる。あまり人に聞かせる様な話でもないのだが、今の彼女には思った事をそのまま伝

えればいいのだ。


「なんか格好悪いだろ?特にあのお面とかさ。お前も気付いてる通り、俺はこの顔が“売り”なワケだ。隠しちゃったら

勿体無いだろ?」

「………君は先ず髪型から直し給え!」



カカシの言葉におもきり眉を上げ目を細くしては云ってのけた。

彼女がカカシを見たのもそれまでで、その目は自然と天上へと向けられる。暗部へ行くか否か。別にどちらでもいい

し、どうでもよいのだ。

カカシの逆立った髪が目先を邪魔するから、はそれを思うままに引っ張った。



「いたたたたっ!いたいいたい!」

「暗部へ入ったって君はコレですぐバレる!」

「ん?それだったらお前だって同じだろ」



の視線いっぱいに入り、カカシはにっこりと笑った。両手で彼女の頬を包み逆さのまま続ける。



「“雨宿りの術”なんてもん掲げて帰ってこられたら、誰だってお前って判るよ。」



この霧雨の空間に居て、カカシは思い出した事があった。顔も知らなかった彼女を、何故あの時の中忍だとすぐに気

付いたのか。

冷たい殺気の裏にある優しい心も、雨を受けて悲しみに灯る熱い闘志も、はっきりと自分の名を否定した声も、その

隅々に至るまで、カカシはこうしてあの時と同じように感じたのだ。

そう。それはあの中忍をと認識した日。写輪眼いっぱいに受け入れた記憶。

もうそんなもの使わなくったって判断出来るくらい、今の彼女は彼女だった。だから、本当は何処に居たってカカシには

判るのだ。



「俺はずっとここに居るから、お前が帰りたいと思った時帰ってくればいい。」

「うん」



カカシからはついに「行かないでくれ」という言葉は出なかった。

けれど、きっとこれで伝わる筈だとカカシは疑問の無い口付けをに落とした。両者の顎が鼻に当たり、妙な感覚で

も優しく味わえる、包み込む様なキスを。



――帰ってきた時、俺はお前に…





ピー ひゅるるるるる



空でトンビが鳴いている。獲物を捕って家へ帰るのだ。






















カカシせんせの方はこれで一先ず終了です。
ちょっと切ないお話になってしまいました。。

それにしても……
なんでドリームなのに何だって戦ってるんだい、コラ?
いつまでカカシのヘアーをいじるつもりだい、オイコラ?
と思った方。

とりあえず、忘れてください。笑

甘いものは、別腹と言うではありませんか!!;;;;
別腹用のものを、これから書けるといいなと、思っております。。

ここまでのお付き合い、ありがとうございました*^^*



ブラザを閉じてお戻りください。。